チンチラの鼻詰まりは比較的珍しい疾患であり、効果的な治療法はわかっていません。
鼻汁の排出を伴う鼻炎であれば、一般的な内科治療でよくなることも多いのですが、歯根や腫瘍など、物理的な閉塞を伴う鼻詰まりであれば改善させることは困難であることが多いです。
内科治療としては抗生剤や抗炎症剤の内服薬を使っていくことや、薬剤を吸入させるネブライジングという処置を実施していくことが多いです。
歯根の過長や仮性歯牙腫と言ったような物理的な閉塞があると内科治療で改善させることはなかなか困難ですが、外科的な介入がしにくい部位であり、手術を実施した報告や情報が少ないのが現状です。
プレーリードックやデグーといった他の動物種では鼻道に対して手術が実施されている例があるので、それをチンチラにも応用し、実施していくのは治療の一つの選択肢になります。
症例
5歳齢のチンチラが鼻詰まりで来院しました。
鼻を鳴らしながら呼吸をする感じで、呼吸が苦しそうとのことでした。
病院の中でも努力性呼吸をしており、鼻汁の排泄がありました。
内服薬による内科治療を実施しましたが、改善が認められないので、鼻道の精査をするためにCT検査を実施しました。
CTで鼻腔内を見てみると、臼歯の歯根が過長し、鼻道内を占拠していました。


歯根部が腫瘤を形成しているので、仮性歯牙腫と判断しました。
物理的な閉塞により呼吸が苦しくなっている可能性を考え、チンチラでは情報はほとんどないものの、手術を実施することにしました。
麻酔をかけて鼻まわりの毛を刈り、手術の準備をします。
円鋸を行う部分、鼻骨を切除する部分はCTでの位置を参考に慎重に決定をします。
皮膚を切開し、そのすぐ下に露出した鼻骨をラウンドバーを用いて削っていきます。


削って穴を開けたら、穴のすぐ下に腫瘤があるか確認をするためにCTを撮ります。
位置が正しいようであれば、その穴から腫瘤を確認しながら削っていきます。
どれくらい削れたか、深さ方向や位置を確認する目的で、途中でその都度CTを撮りながら進めていきます。
CT上で腫瘤が大部分取り除ければ切除はそこまでとします。


鼻骨の穴はそのまま開放し、周囲の皮膚を固定し手術を終えました。
術後は鼻出血が少量続き、呼吸状態もなかなか変化がなかったのですが、傷口が落ち着いてきて鼻汁も止まるようになってきてから少しずつ呼吸が楽になり、食欲も出てきました。
チンチラの鼻詰まりや呼吸困難に対しての治療は、現時点ではなかなか情報に乏しいですが、物理的な閉塞があるようであれば外科的な切除も選択肢の一つにはなると考えます。
小さなご家族が鼻詰まりでお困りの方は、是非一度当院までご相談ください。