リンパ腫はフェレットの腫瘍においてインスリノーマ、副腎腫瘍に続く3番目に多い種類の腫瘍です。
体の様々な部位にしこりを作ってしまうことが多く、わかりにくい症状であることもあり、他の病気との区別が重要になります。
診断をしていく上で、様々な検査をしていくことが重要であり、リンパ腫の体の中の広がりを捉える上でも重要になります。
治療の主体は化学療法(抗がん剤)になりますが、診断や治療をしていく上で外科的な摘出が有効になる場合もあります。
症例
4歳のフェレットが、他の動物病院にて消化管内の異物が閉塞している状態を疑われ、当院に来院しました。
2日ほど前から食欲がなくなり、吐き気が出てきているとのことでした。
超音波検査を実施してみると、消化管の流れが悪くなっていることがわかりました。
症状や、フェレットでは消化管内異物による消化管閉塞が多いことからも異物による閉塞が第一に疑われる状態でした。
また、腹水が少量出てきており、消化管閉塞からの破裂を疑う状態でもあり、緊急的な対応が必要な状態であり、ご家族の同意も得て、緊急手術となりました。
血液検査にて麻酔を安全にかけていけるかどうかの評価を行い、レントゲン検査にて心臓や呼吸器の状態の確認を行い、麻酔に関しては実施可能と判断しました。
麻酔をかけて、人工呼吸用のチューブを設置して体位を固定します。
腹部正中切開にて開腹し、消化管の状態を確認してみると、小腸の最初の部分である十二指腸が破れており、消化管内容物がお腹の中に漏れているような状態でした。
十二指腸は膵臓と接しており、容易には切除が難しい消化管の位置になります。
破れてる十二指腸の周囲の膵臓を、なるべく傷つけない形で剥離をしていきます。
明らかな異物が確認できない中で消化管が破れており、原因として腫瘍の可能性も考え、可能な限りでのマージンを確保して十二指腸の破れている部位を切除しました。
切除した後の十二指腸を内容物が漏れないように吻合していきます。
フェレットの十二指腸はかなり細いので、吻合に使用していく縫合糸も髪の毛と同じぐらいの細さのものを使用します。
無事吻合を終え、内容物が漏れてこないかチェックを行います(リークチェック)。
その後閉腹をしていき、無事に手術を終えました。
手術後、吐き気も収まり、徐々に体調が回復してきてくれました。
切除した十二指腸を病理組織検査に出してみると、リンパ腫として診断がかえってきました。
今回のケースのように、しこりを形成しなくてもリンパ腫ができてしまうこともあります。
そのような場合に外科的な切除が診断と治療において有効になることもあります。
リンパ腫と診断された場合には、治療のメインは化学療法(抗がん剤)になります。
小さなご家族がリンパ腫にてお困りの方は、是非当院までご相談ください。