犬の肝臓腫瘍
犬猫の肝臓腫瘍は比較的珍しく、肝臓以外の腫瘍からの転移の方が多いとされています。
しかし、それ以外の動物の肝臓腫瘍は、あまりわかられていません。
肝臓にできる腫瘍は比較的薬が効きにくいタイプの腫瘍が多く、その結果として、抗がん剤は効果的ではないことが多いです。
腫瘍の位置が限局していれば、外科的な切除がもっとも有効になることが多いです。
しかし、肝臓腫瘍の手術は、肝臓自体が上腹に位置することや、肋骨に囲まれていること、大血管に近いことなどの理由で手術の難易度が高くなることが多いです。
その中でも腫瘍が左側に限局していると比較的切除の難易度は低く、右側や中央の基部に存在すると難易度が高くなってしまいます。
症例
10歳のトイプードルが発作を主訴に来院されました。
血液検査で低血糖があり、発作の原因として低血糖を疑いました。
また、レントゲン検査、超音波検査にて肝臓付近に腫瘍があることがわかりました。
低血糖の原因として、ホルモンの病気や腫瘍の可能性、肝不全の可能性を考え、各種の検査をしましたが、その中で疑われる病気はありませんでした。
肝臓の腫瘍でも、大型化をしていたり、腫瘍の種類によっては低血糖を起こしてしまうことがあります。
よって、低血糖の原因は肝臓腫瘍であることを疑い、切除の可能性を探るためにCT検査を実施しました。
CT検査の結果、腫瘍は肝臓の中央部に存在し、後大静脈という大血管に接していることがわかりました。
肝臓中央部に腫瘍が存在し、大血管に接しているので、手術難易度は高いことが予想されました。
手術前に、内科治療にてなんとか血糖値が上がらないか、試みていましたが、なかなか上昇が認められなかった為、手術に踏み切りました。
通常の開腹の仕方では大型の腫瘍の全容を確認できないことが予想されたので、左右にも大きくお腹をあけました。
しかし、腫瘍の根本の部分と血管との位置関係がうまく見れなかったので、さらに胸の正中を開くアプローチも加えました。
そこまで大きくひらくと、しっかり腫瘍の根本が確認でき、血管の処理も安全に実施することができました。
腫瘍を切除し、大きく開いた術創を閉じていきます。
術創自体は大きくなってしまう一方で、安全に手術を終えることができ、麻酔からも無事に覚醒してくれました。
術後血糖値は安定し、腫瘍によって下がってしまっていたことが確認できました。
手術後元気になって退院していきました。
切除した腫瘍は病理組織学的検査にて胆管癌と診断されました。
残念ながら、悪性度が高いことが多く、術後も注意してみていく必要があります。
肝臓の、しかも中央部の腫瘍の切除は比較的難易度が高く、手術の実施自体を躊躇してしまうこともあります。
当院では手術のリスクとメリットをお話し、ご家族との相談の上で実施することもあります。
肝臓腫瘍でお困りの小さなご家族がいる方は、是非当院までご相談ください。