猫の尿管結石は比較的罹患率の高い疾患であり、尿管での尿の流れが止まってしまうと急性の腎不全となります。
急性腎不全を起こしてしまうと、元気食欲がなくなり、嘔吐を繰り返す様になります。
ここ20年ほどで、猫の尿路内に形成される結石は種類として食事療法で溶解することがほとんどなく、結石が原因で尿管閉塞を起こしてしまうと外科的な対処になってしまうことが多いです。
尿管閉塞の外科的な治療として、インプラントを入れていくSUBシステムの設置や尿管ステントの設置と、インプラントを入れない尿管切開や尿管膀胱吻合術などがあります。
症例の状況や閉塞を起こしている原因によって手術の方法は変わるため、検査にて状態をしっかり評価する必要があります。
症例
9歳の猫が頻回の嘔吐を症状に来院しました。
検査を実施すると、血液検査で腎臓の値が非常に高くなり、高度の腎不全になっている状態でした。
レントゲン検査と超音波検査を実施すると、左側の尿管に結石が詰まり、水腎症になってしまっている状態でした。
尿管が詰まってしまってから時間が経過していると、尿管の閉塞を解除しても腎臓の機能が戻ってこない可能性もあります。
そういったリスクやデメリットもご家族にご理解していただいた上で手術を実施することにしました。
CT検査にてその他の細かい結石がないか確認していきます。
麻酔をかけて毛刈りを行い、術野の消毒をして、手術の準備をしていきます。
腹部正中切開を行なって開腹を行なったところ、水腎症になっている腎臓と拡張した尿管が確認できました。
拡張した尿管を追っていくと、膀胱近くに結石があり、そこで尿管が詰まっていることがわかりました。
尿管切開を行い、結石を摘出しました。
その後、尿管の切開部位からカテーテルを入れて膀胱までの開通を確認したところ、膀胱までの間に尿管が狭くなってしまっている部位が複数箇所ありました。
全ての尿管狭窄部位の修復は難しいと判断し、尿管の切開部位から、尿管自体を切断し、膀胱に吻合する尿管膀胱吻合術に切り替えました。
尿管の切断部位を扇型に切り広げた後、尿管が広がる様に膀胱に縫い付けていきます。
尿管と膀胱を吻合する際に使用する糸は、髪の毛と同じくらい細い縫合糸を使用して縫合していきます。
膀胱と尿管を吻合した後、縫合部位からの漏れがないかどうかチェックしていきます。
漏れがないこと確認した後、閉腹をしていき、手術を無事に終えることができました。
手術後、10日間ほどかけて点滴をしながら腎臓の値は下がっていき、食欲も出てきたため、無事退院となりました。
今後は腎臓のケアをしつつ、再度尿管閉塞が起こってしまわないか経過を見ていきます。
猫の尿管閉塞は一度起きてしまうと、外科的な介入を行わないと良くならないケースが多いと感じます。
もちろん麻酔や手術はさらに腎臓にダメージを与えてしまう可能性もあるため、手術を実施するためにはリスクやデメリットを十分にご理解していただく必要があります。
小さなご家族が尿管結石でお困りの方は、是非一度当院までご相談ください。