チンチラの消化管内異物は消化管鬱滞の原因として可能性の一つに挙げられていますが、実際の診断は難しい場合が多く、手術前に確実に診断する方法がありません。
本来チンチラは草食獣の為、食物を咀嚼して飲み込むことがほとんどであり、異物を誤食してしまった時にも咀嚼をして飲み込むので、消化管が閉塞する危険性はさほど高くはありません。
しかし、被毛の塊であったり、繊維質の食渣の塊であったり、咀嚼された細かな異物の塊であったりするものによって消化管が閉塞してしまう場合があります。
閉塞してしまう消化管としては結腸内であることが多いとされていますが、詳細な報告やデータは現在のところありません。
結腸内異物の症状は、非特異的なことが多く、元気消失、食欲不振、排便量の低下や軟便、下痢などで特徴的なものはありません。
診断として、レントゲンや超音波検査、CT検査などの画像検査によって疑いを高め、最終的には開腹をして実際に消化管を確認することによって行います。
症例
3歳のチンチラが食欲廃絶、排便停止を症状に来院しました。
他の病院にてすでに治療を行っており、治療反応が悪いことからも消化管内異物をすでに疑っていました。
レントゲン検査や超音波検査にて消化管の鬱滞を検出し、特に超音波検査にて消化管の閉塞を疑う所見を確認しました。
血液検査でも明らかな異常はなく、状況証拠からも消化管閉塞を強く疑った為、麻酔下にてCT検査を実施し、その後開腹手術に移行しました。
麻酔をかけて、体位を仰向けに固定し、お腹周りを毛刈りし消毒を行います。
開腹を行い、消化管を確認してみると、拡張した結腸と、結腸内異物が有り、その後の結腸が細くなっていることを確認しました。
結腸を切開して異物を摘出し、結腸を縫合して閉じていきました。
結腸自体が非常に細く、粘膜も薄いので、縫合する糸も髪の毛と同じぐらいの細さの糸を使用していきます。
また、胃の鬱滞と食渣の貯留があったので、胃切開も行い内容物を除去しました。
結腸内異物の摘出と胃の食渣の除去を行い、閉腹をして手術を終えました。
術後すぐに、全く出ていなかった便が下痢として排出されはじめたので、閉塞が解除できたことがわかりました。
術後は少しずつ食欲が増えていき、状態が上がっていってくれました。
チンチラの結腸内異物はまだ情報が少なく、病気としてもよくわかっていません。
また、診断が非常に難しく、各種画像検査で疑いは高めることはできても確定はできません。
よって、開腹してから状況を確かめることになってしまうことも多いですが、物理的に原因を除去できないと状態が良くならないことも多いです。
小さなご家族が消化管内異物、結腸内異物でお困りの方は、是非一度当院までご相談ください。