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柏メルビー動物病院

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会陰ヘルニア 犬 排便困難 整復手術 しぶり 排尿困難

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会陰ヘルニアとは、直腸を支持する筋肉が萎縮してヘルニア孔が発生し、腹部の臓器や組織がヘルニア孔を通ってお尻周りの皮下に脱出する疾患です。

高年齢の未去勢の小型犬や中型犬に多く発生し、好発犬種として、ウェルシュ・コーギー、ミニチュア・ダックスフント、トイプードルやマルチーズなどが挙げられます。

症状としてはお尻周りの皮下に直腸が蛇行することによって排便障害や排便困難、排尿障害などが起こります。

内科的な治療として、定期的に直腸の便を取り除く摘便や浣腸などを行い、便の軟化剤を投与することによっても、ある程度症状をコントロールをすることができます。

しかし、内科治療によってのコントロールは限界があり、便が溜まってしまう直腸壁の菲薄化などが進行し、状態としては悪化していく傾向にあります。

症状の改善及び長期のコントロールを目的として、外科的な治療を実施されることが多いです。

手術の方法として、数多くの方法が考案をされていますが、比較的再発率の高い疾患であり、いまだに完璧な方法というものはありません。

当院では、会陰ヘルニアの重症度により症例に合わせていくつかの術式を組み合わせて実施をしており、可能な限り再発率や合併症の発現率を下げるように努力をしています。

症例

13歳のトイプードルが、他の動物病院にて会陰ヘルニアと診断を受け来院しました。

排便時間が長く、便のしぶりがある状態が続いているとのことでした。

お尻まわりをみると、明らかに組織が盛り上がり、腫れているのが確認できました。

直腸検査にて、肛門から指を入れて触診してみると、直腸が蛇行し、便が多量に溜まっているのが確認できました。

レントゲン検査や超音波検査を実施してみると、お尻周りの膨らんだ組織の中に、前立腺や小腸が含まれていることがわかりました。

レントゲン画像 お尻まわりの膨らみがわかる
レントゲン画像 お尻まわりの膨らみがわかる

重度の会陰ヘルニアであり、症状もかなり強いことから、外科的な整復を実施し、長期間のコントロールを狙うことをお勧めし、ご家族の承諾をもらいました。

いくつかの臓器がお尻側に脱出しており、ヘルニア孔も大きいことが予想されたため、結腸固定術、精管固定術、膀胱固定術、内閉鎖筋転移術を組み合わせて行い、ヘルニア孔に合わせて人工の素材であるポリプロピレンメッシュを用いた整復手術を計画しました。

全身麻酔をかけた後、まず腹部にアプローチを行い、お尻がわの皮下に脱出してしまった小腸と前立腺をお腹側に戻して整復を行いました。

肛門側に変位していた小腸をお腹側に整復
肛門側に変位していた前立腺をお腹側に整復

その後、精巣摘出術を行って精管を切除した後に、前立腺との結合部を牽引して腹壁に固定しました。

また、蛇行してしまっていた直腸を腹部側に牽引し、結腸を腹壁に固定しました。

結腸を腹壁に固定
精管を腹壁に固定し前立腺を固定

閉腹をして腹部のアプローチを終了しました。この時点でお尻側に脱出してしまっていた臓器が腹部側に整復されて固定をされているので、お尻周りの膨らみがかなり縮んでいることが確認できます。

腹部臓器の整復前 お尻まわりの膨らみが大きい
腹部臓器の整復後 お尻まわりの膨らみがなくなる

その次にお尻側にアプローチをしていき、ヘルニア孔を直接確認します。

形成されたヘルニア孔がかなり大きく、自己の筋肉だけではヘルニア孔の整復は困難と判断し、人工の素材であるポリプロピレンメッシュを用いてヘルニア孔を閉鎖しました。

ヘルニア孔は左右で大きさに違いがあり、片方は自己の筋肉を用いることでヘルニア孔の閉鎖を実施することができました。

ポリプロピレンメッシュによる整復
自己の筋肉による整復

その後お尻側の傷口を閉鎖していき、手術を終えました。

手術後、傷口が治っていくに伴ってお尻周りの腫れも引いていき、便もスムーズに出せるようになりました。

術直後の術創の様子
抜糸時の術創の様子 腫れが引いている

その後再発がないかどうか慎重に様子を見ていきます。

会陰ヘルニアは発症をしてしまうと生活の質が著しく低下し、内科治療によっての改善があまり見込めない疾患になります。

外科的な治療によって症状が劇的に改善することも多い反面、比較的再発率の高い疾患でもあります。

しかし、さまざまな術式を組み合わせることによって再発率を下げることが可能になるので、当院ではできる限り外科的な治療を推奨しています。

小さなご家族が会陰ヘルニアにてお困りの方は、是非一度当院までご相談ください。

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