犬の口腔内腫瘍
口腔内腫瘍は悪性腫瘍が多く、早く大きくなったり、他の臓器に転移していくことが多いです。
悪性腫瘍の種類としては、メラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫の発生が多く、棘細胞性エナメル上皮腫や骨肉腫などもできることがあります。
腫瘍が大きくなってくると、食べることができなくなり、腫瘍自体が壊死をすることによって臭いが出てきて生活の質が落ちてきます。
局所の腫瘍を制御していくには外科的な切除がもっとも有効になる場合が多く、腫瘍の種類によっては放射線治療も有効なことがあります。
また、転移性が高い腫瘍が多いので、術後の化学療法(抗がん剤)が必要になってくることも多いです。
症例
16歳の雑種犬が口腔内腫瘍のセカンドオピニオンで来院しました。
他の病院で手術を行うも、再発を繰り返しているとのことでした。
左の下顎に巨大な腫瘍を形成しており、レントゲン検査でみてみると、顎の骨が溶けていることがわかりました。
腫瘍が大きくなってくると、食欲が低下をしてきてしまい、腫瘍をとると元気になる、ということを繰り返している状態でした。
再発をしないように手術を行うには、顎の骨ごととる手術が必要です。
手術自体の負担は決して小さくありませんが、もう一度切除を行なって再発をしないように管理をしていけば、今後を楽に過ごすことができるため、ご家族との相談の上手術を実施することにしました。
口の奥に腫瘍ができているので、口の横(口角)を切って奧を露出していきました。
腫瘍の周りを剥離していき、腫瘍の付着部を確認すると下顎骨に癒着をしていました。
下顎骨を離断し、腫瘍を切除しました。
開いてしまった口腔粘膜を縫合し閉じていきます。
口角も縫合し閉じると、顔の変形も最小限で済みました。
術後は最初は食欲はなかったものの、徐々に回復していき、術後2週間ほどでしっかり食べれるようになりました。
切除した腫瘍の病理組織学検査の結果は骨肉腫でした。
骨肉腫は転移性が高く、術後の化学療法を考慮する必要があります。
口腔内腫瘍は口の奥にできると早期発見がなかなか難しく、大きくなってから発見されることがよくあります。
腫瘍の症状を抑えるためには外科的な切除が有効になることが多くあり、放射線治療や化学療法も組み合わせて実施していきます。
広範囲な顎骨を含む切除も、当院では治療方法の一つとしてご提案できるので、口腔内腫瘍でお困りの小さなご家族がいる方は、是非一度当院までご相談ください。