敗血症を呈した子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは、女性ホルモンの影響等により子宮に膿が溜まってしまう病気であり、高齢の未避妊の雌に比較的よくみられます。
症状がないような比較的軽度な状態から、細菌感染が全身に広がり、敗血症になってしまい生命の危機に瀕してしまうような状態まで様々です。
症状がない状態から急速に悪化してしまう可能性もあるため、子宮蓄膿症が認められるような状態であれば早期の治療が推奨されます。
治療法には、膿の排出を促進させるホルモンの注射をしたり抗生剤の注射や点滴治療を行う内科治療と、膿の溜まった子宮を摘出してしまう外科治療があります。
症例
17歳のミニチュアダックスが急性の虚脱にて来院しました。
病院でも立ち上がれない状態であり、血液検査で低血糖と低蛋白、重度の炎症があることが分かり、画像検査で子宮の拡張が認められました。
重度の子宮蓄膿症であり、細菌感染が全身に広がってしまっている敗血症という状態が疑われました。
重篤な状態であり、緊急的な手術が必要な状態でした。
リスクは非常に高いですが、ご家族とも相談の上手術に踏み切りました。
開腹をしてみると、子宮が破れ、腹腔内に膿が広がっている状態でした。
麻酔の前から血圧が不安定でしたが、麻酔をかけ始めた時からさらに低下し、麻酔管理も非常に難しい状態でした。
開腹した時の消化管の色合いが非常に悪く、循環不全を呈している可能性が高いと考えられました。
麻酔時間を極力短くするために、助手や外回りの看護師さんと協力し、可能な限り短時間で卵巣子宮摘出し、腹腔内洗浄を実施し閉腹しました。
麻酔後も状態が不安定で、顔もあげられない状態が続いていましたが、徐々に回復していき、約2週間の入院を経て元気に退院していきました。
子宮蓄膿症は状態によっては命に関わる疾患で、早急な治療が推奨されますが、重篤な状態に悪化してからでもなんとか回復してくれる場合もあります。
小さなご家族が子宮蓄膿症にてお困りの方は、是非当院までご相談ください。