肝臓腫瘍 肝細胞癌
犬猫の肝臓腫瘍は比較的珍しく、肝臓以外の腫瘍からの転移の方が多いとされています。
それ以外の動物の肝臓腫瘍は、あまりわかられていません。
肝臓にできる腫瘍は比較的薬が効きにくいタイプの腫瘍が多く、抗がん剤は効果的ではないことが多いです。
犬の肝臓腫瘍の中で一番多いのが肝細胞癌です。
腫瘍の位置が限局していれば、外科的な切除がもっとも有効になることが多いです。
しかし、肝臓腫瘍の手術は、肝臓自体が上腹に位置することや、肋骨に囲まれていること、大血管に近いことなどの理由で手術の難易度が高くなることが多いです。
その中でも腫瘍が肝臓の左側に限局していると比較的切除の難易度は低く、肝臓の右側や中央の基部に存在すると難易度が高くなってしまいます。
症例
16歳のミニチュアダックスフンドが失神を症状に来院しました。
血液検査では肝臓の値の上昇が見られ、レントゲン検査、超音波検査にて肝臓の巨大な腫瘍が認められました。
切除の可能性を探るために、CT検査を実施しました。
CT検査の結果として、腫瘍は肝臓の左側に限局していることがわかりました。
この子の肝臓腫瘍の中では、腫瘍の大きさは巨大ではあるものの、比較的切除の難易度は低いものであることが予想されました。
ご家族と相談の上、高齢ではありますが、切除ができれば今後元気で過ごせる可能性が高いため、手術を実施することにしました。
通常の開腹方法に加え、肝臓基部を露出するために左右へ大きくお腹を開きました。
巨大な腫瘍が肝臓左側にできていることがわかりました。
そこから、腫瘍ができている肝臓の基部を剥離し、血管などの脈管系を露出していきます。
肝臓に入る血流と、肝臓から出ていく血流が流れている血管を別々に処理し、結紮離断します。
その後肝臓実質を切り離し、腫瘍を切除しました。
大きく開いたお腹を閉じていき、手術を終えました。
高齢ながら、麻酔も比較的安定し、手術後の状態も良く、元気に退院していきました。
切除した腫瘍の病理組織学的検査の結果は肝細胞癌であり、切除がしっかりとできていれば、比較的再発や転移が少ないタイプの腫瘍になります。
今後も定期的に経過をみていきます。
肝臓腫瘍は大きくなるまでに症状が出ないことも多く、見つかった時点で非常に大型化していることも多いです。
病理組織検査にて、肝細胞癌であれば、切除後状態良く過ごせる場合も多い為、積極的な手術を推奨しております。
肝臓腫瘍にてお困りの小さなご家族がいる方は、是非当院までご相談ください。