インスリノーマはフェレットにできる腫瘍の中で、リンパ腫と副腎腫瘍と合わせて3大腫瘍と言われているぐらい発生率が高いものになります。
インスリノーマは腫瘍化した膵臓の膵島細胞から過剰なインスリンが分泌され、低血糖を引き起こす腫瘍性疾患です。
低血糖が起こると、症状として、活動性の低下や昏睡、流涎、痙攣、後肢のふらつきや虚脱などが現れます。
また血糖値が低くても明確な症状が現れないこともあり、注意が必要です。
診断として、血液検査で低血糖を検出することで仮診断を行います。
フェレットは体が小さく、レントゲン検査や超音波検査による画像検査で膵臓の腫瘍を発見できることはほとんどありません。
しかし、明確な報告はないものの、近年発達してきた画像検査の中で、CT検査を用いることによって、膵臓の腫瘍を発見できることがあります。
治療は内科治療と外科治療に大別され、内科治療でもある程度の期間は良好にコントロールできることは多いですが、長期間のコントロールを狙うようであれば外科治療が推奨されています。
しかし、外科治療も根治治療にならないことも多く、実施するかどうかはご家族との相談により決めていきます。
症例
6歳齢のフェレットが発作で来院しました。
意識レベルがかなり低く、低体温も伴っていたので、加温と酸素の投与を行い、血糖値を測定してみると、かなりの低血糖があることがわかりました。
点滴で糖分を投与し、血糖値の上昇によって症状が改善したことで、インスリノーマと仮診断を行いました。
レントゲンや超音波検査によって膵臓の腫瘍を検出できるか見てみましたが、検出は難しい形でした。
ステロイド剤の投与によって血糖値を上げ、症状が安定してきたところで、外科治療のご提案を行い、ご家族もご希望されたため、手術を実施する形になりました。
麻酔をかけて体位を固定し、腹部を毛刈りを行い手術の準備をしていきます。
その後にCT検査を実施し膵臓の腫瘍を確認しました。
その後開腹をし、実際にCT検査でうつった位置に膵臓に腫瘍があることを確認し、腫瘍の切除を行っていきました。
全部で4箇所膵臓の腫瘍の切除を行い、閉腹をしました。
術後は比較的血糖値は安定していたものの、その後症状に出ないレベルでの血糖値の低下がみられました。
内科治療を継続しつつ、経過をみていきます。
インスリノーマはフェレットに比較的高頻度でみられる腫瘍性疾患です。
内科治療のみでもある程度管理できますが、長期間の管理を狙うようであれば外科的な治療も選択肢の一つになります。
ただし、外科的な治療も根本解決できる治療ではないことは、ご理解いただく必要があります。
小さなご家族がインスリノーマにてお困りの方は、是非一度当院までご相談ください。