トカゲの骨折は、多くが高所からの落下やケージに挟んでしまうなど外的な要因によって起こります。
また、代謝性骨疾患に起因して、骨の構造が弱くなり骨折が生じる場合もあります。
基本的な治療は安静や鎮痛薬の投与、外固定によって癒合することを狙いますが、骨折の状態やトカゲの大きさなどによっては手術による内固定によって治療ができることもあります。
手術によっての治療を実施するかどうかは、実施するメリットとデメリットをご家族にお話した上で相談しながら決めていきます。
また、代謝性骨疾患を疑うようであればカルシウムやビタミンDの補充、紫外線照射の環境を見直すことが重要です。
症例
1歳のブルーイグアナが前足を痛そうに挙げているとの症状で来院しました。
挙上している足をみてみると、一部が盛り上がっていました。
病院内でもやや足を痛そうに挙げています。
レントゲンを撮って足を確認してみると、上腕骨が骨折していることがわかりました。
ちょうどその部分に仮骨も盛り上がっており、骨折からやや時間も経過しているようでした。
このままの状態で安静にしながら骨の癒合を狙うこともできましたが、きちんとした形で骨が癒合し、運動機能もしっかりと回復してもらいたいとのご希望がご家族にあったため、麻酔や手術のデメリットもご理解いただいた上で手術を実施することにしました。
麻酔薬を筋肉注射し、麻酔をかけていきます。
麻酔がかかった状態で患部の鱗を消毒し、足の固定を行います。
ドレーピングを実施し、鱗を切開していきます。
骨折部位には仮骨の盛り上がりがあり、骨を元の状態に整復することがやや難しい状態となっていました。
仮骨を削っていき、元の上腕骨の太さの状態まで戻すと、骨折部位を合わせることができました。
骨折部位を整復した状態で、ピンと呼ばれる医療用のステンレスでできた固定具を上腕骨内部に入れていき、骨折部を固定しました。
ピンを骨内に入れて固定する方法を髄内ピン法と呼びます。
この方法は細い骨の固定に使うことができますが、骨の回転方向に対する固定は弱くなってしまうのが問題となることがあります。
トカゲをはじめ、エキゾチックと呼ばれる小動物たちは骨の大きさも小さいので、この髄内ピン法を用いられることが多くあります。
髄内ピンを入れた後、補助の固定として太い縫合糸を上腕骨に巻きつけて固定しました。
切開した筋肉と鱗を縫合して閉じていき、手術は終了しました。
その後レントゲン検査にて経過を追っていき、術後2ヶ月ほどで骨癒合を認めました。
トカゲをはじめ、エキゾチック動物たちは体の小ささから骨折した時の骨の固定方法が問題となることが多くあります。
小さなご家族が骨折でお困りの方は是非一度当院までご相談ください。