口腔内メラノーマは犬にできる口腔内悪性腫瘍の中で一番発生率が高く、転移することも多い為、治療が大変な腫瘍の一つになります。
高齢犬にできる割合が多く、口の中はなかなかしっかり見せてくれることが多くないので、発見された時にはかなり大きくなってしまっていることもあります。
もしくは腫瘍が大きくなることで出血が起こり、流涎や口臭が強まることによって腫瘍の存在が気づかれることもあります。
好発犬種として、プードルやダックスフンド、ゴールデンレトリーバーなど、日本で人気がある犬種に多く認められる傾向にあります。
診断は腫瘍の一部をとってくる生検を実施し病理組織検査を実施することによって行い、転移性も高いことから、レントゲン検査や超音波検査、CT検査といった画像検査によって転移の有無の確認を行います。
治療は局所制御として外科治療が行われる場合が多く、また、転移性も高いことから、転移抑制を目的とした化学療法(抗がん剤治療)も合わせて行われる場合が多いです。
また、効果が見られることも多いので、局所制御の治療として放射線治療が合わせて行われることもあります。
症例
14歳のトイプードルが他の病院にて口の中のしこりを切除し、口腔内メラノーマとの診断を受けたとのことで来院しました。
口の中の腫瘍は大きく、出血や痛みを伴っていたため、食べることもつらい状態が続いており、なんとか痛みを抑えて食欲を出してあげたいとのご希望がご家族にありました。
切除の可能性を探るため、また、転移状況の確認のため、CT検査を実施することにしました。


麻酔をかけて腫瘍の状況をしっかり見てみると、舌根部から腫瘍が出てきており、完全に切除していくには、舌ごと切除を行わなければならない状態でした。
CT検査上は他の臓器への明らかな転移はなく、口腔内の腫瘍のコントロールを行うことによって、状態が上がることを狙える状態でした。


ご家族とのご相談の上、根治の目的ではなく、腫瘍の部分的な切除をおこなっていくことにしました。
モノポーラ型の電気メスを使うことによって、出血量を減らし、腫瘍をなるべく大きい面積で根本から切除をしていきます。


腫瘍の大部分を切除することができました。残存する腫瘍はまた大きくなっていきますが、その速度によっては大きくなるまでの時間を稼ぐことができるので、食欲も回復し、快適に過ごすことでできるようになりました。
この症例はもう一度同様の手術を行うことによって約半年間は食欲がある状態を保つことができました。
口腔内メラノーマは悪性度が高く、治療をしても再発率や転移率の高い、非常に難しい腫瘍の一つになります。
状況によって、根治を狙う治療や緩和目的での治療をご提案できることもあるので、小さなご家族が口腔内メラノーマでお困りの方は是非一度当院までご相談ください。