鼻の奥、鼻咽頭という領域に狭くなってしまっている部分が有り、その部分の空気の通りが悪くなってしまい呼吸が苦しくなってしまう疾患です。
生まれつき狭い場合と後天的に狭くなってしまう場合が有り、猫では後天的になってしまう場合が多いとされています。
原因は詳細にはわかっていませんが、猫カリシウイルス感染症や猫ヘルペスウイルス感染症が関与し、狭い部分が形成される刺激になっていると考えられています。
症例
5歳の猫が数ヶ月続く呼吸音の異常を症状に来院しました。
常に吸気の努力性呼吸であり、特徴的なズーズーといったような呼吸音が鳴っていました。
鼻汁は特には認められませんでした。
覚醒下での口腔内の視診や、レントゲン検査では異常は認められませんでした。
頭部の透視検査にて、鼻咽頭部に膜様構造物があるのがわかりました。
その後、全身麻酔下での内視鏡検査(後部鼻鏡検査)にて中央部に小さい穴が空いている膜様構造物が鼻咽頭にあることを確認し、口腔から入れた内視鏡では後鼻孔が確認できませんでした。
また同時にCT検査も実施し、膜様の構造物が鼻咽頭部にあることを確認しました。
治療には、通常であれば鼻咽頭部のバルーン拡張術が適応になる疾患ですが、CTで確認した膜様構造物の位置が軟口蓋尾端に近いこと、内視鏡で確認した膜様構造物に開いていた穴が小さいのでバルーン拡張術を行う難易度が高いことなどから、軟口蓋切開によるアプローチからの狭窄部の切開を行うことにしました。
麻酔をかけて仰向けに固定を行い、軟口蓋に縫合糸をかけて牽引を行い、切開を行っていきました。
鼻咽頭の内腔が見えてくると、鼻に続いていく途中で非常に狭くなってしまい、点のような穴が開いているだけの膜様構造物が見えてきました。
周囲を傷つけないように注意しながら膜様構造物を切開し、拡張を行いました。
その後、切開した軟口蓋を縫合し閉鎖しました。
術後はズーズー鳴っていた呼吸音が消失しましたが、2週間程度でまた鳴ってきてしまいました。
それでも術前に比べると呼吸は楽な状態にできたので、経過をみていっています。
猫の鼻咽頭狭窄は、比較的珍しい疾患ではありますが、診断自体が難しく、上手く発見できていない場合も多いと考えられています。
ズーズーといった呼吸音でお困りの小さなご家族のいる方は、是非当院まで一度ご相談ください。