チンチラでの子宮疾患は他の動物に比べて少ないとされています。
子宮蓄膿症とは子宮内膜炎が起こり、そこに感染が成立して膿性液が貯まることで発症します。女性ホルモンである黄体ホルモンの影響が強く考えられています。
子宮蓄膿症になると症状として、元気消失、食欲不振、多尿や嘔吐がおこるのが一般的です。
(チンチラの場合嘔吐はほとんどおきません)
状態が悪くなっていくと命に関わることもしばしばあります。
治療は内科療法と外科療法に分かれますが、内科療法にて反応が悪い場合もあり、適切なタイミングで外科療法を実施するのが一番良いとされています。
しかし、チンチラの麻酔に関して、他の小動物と同様に、リスクが非常に低いとは言えず、手術に踏み切るタイミングはご家族と相談しながら慎重に決める必要があります。
症例
6歳齢のチンチラが元気消失、食欲不振で来院しました。
他の病院ですでに子宮に液体が溜まっている状態との指摘を受けていました。
当院でも超音波検査にてその状況を確認しました。
溜まっている液体が膿かどうか確認する方法はなかなか難しいですが、内科療法にて治療反応がみられなかった為、外科療法に移行することにしました。
チンチラは痛みなどのストレスに弱く、それだけでも状態が悪くなってしまうことも多いため、麻酔や手術の時は痛みを最小限にし、ストレスをなるべくかけないような麻酔方法をとることを考えていかなければなりません。
鎮静剤や鎮痛薬を十分に使いながらゆっくり麻酔をかけていきました。
麻酔をかけて仰向けの体勢で固定を行い、腹部の剃毛や消毒で準備した後、開腹を行っていきました。
開腹してみると、通常よりも腫大した子宮が出てきました。
腫大した子宮とともに、卵巣も一緒に摘出を行いました。
子宮の摘出部位をしっかり洗浄した後、閉腹を行っていきました。
摘出した子宮の内部を調べてみると、多量の膿が溜まっている状態でした。
麻酔後は覚醒も良好で、元気に退院していきました。
食欲が戻ってくるまでに少し時間がかかりましたが、手術後1週間が経過する頃にはかなりの量の牧草を食べれるようになりました。
チンチラに麻酔をかけて手術をしていくことに一定のリスクがありますが、手術でしか改善しない状態である場合もあります。
小さなご家族が子宮蓄膿症でお困りの方は、是非一度当院までご相談ください。