フトアゴヒゲトカゲの消化管異物 開腹手術
フトアゴヒゲトカゲも他の爬虫類や犬猫同様、様々なものを誤食します。
特に多いのが飼育環境内にある床材やシェルターの破片などだが、時には寄生虫の塊が閉塞を起こしたり、糞便が固まってしまうことによって閉塞を起こしたりもします。
また、少数ながら、消化管が消化管に入り込んでしまう腸重責を起こしている報告もあります。
診断は触診、レントゲンや超音波検査などの画像診断によって行います。
時にはバリウムなどの造影剤を飲んで行う造影レントゲン検査や、CT検査が診断に必要なこともあります。
実際にお腹を開けてみるまでは診断がつけられないことも度々あります。
症例
8ヶ月齢のフトアゴヒゲトカゲが元気低下と食欲不振を症状に来院しました。
排泄は出ているが下痢をしている状態でした。
水を飲んでも時折吐くような仕草を見せていました。
レントゲン検査と超音波検査にて、消化管の流れがうっ滞していることがわかりました。
また、総排泄孔から給餌している野菜が繊維状に連なって便で出てきていることが確認できました。
消化管の閉塞がないかどうか、単純レントゲンだけでわからない部分を調べるために造影レントゲン検査を実施することにしました。
ガストログラフィンという造影剤を飲ませて、各時間ごとにレントゲンを撮影していきます。
この検査によってやはり消化管の流れがかなり悪いこと、完全な閉塞はないが胃から小腸への造影剤の排出がかなり悪いこと、胃内に造影剤が染み込んでいくような異物が存在している可能性がかなり高いことがわかりました。
ご家族と相談した上で、消化管内に異物が存在する可能性がかなり高いので、開腹手術をすることにしました。
麻酔をかけたところで追加検査としてCT検査を実施しました。
その結果、胃内に異物があること、胃から先の小腸が腸重積を起こしていることがはっきりわかりました。
開腹をしてみると、胃内に繊維状の異物がパンパンに詰まっていて、その先の小腸が腸重積を起こしていました。
重積部位は用手にてゆっくりと整復を行い、腸の血流は問題ないことを確認しました。
その後胃と小腸を切開し、繊維状の異物を摘出しました。
切開部位は吸収性の縫合糸にて縫合し漏れがないことを確認しました。
その後腹筋を縫合し閉腹を行い、鱗を縫合して閉創しました。
術後にすぐに食欲が出てこない可能性もあるので、負担なく強制給餌ができるように食道チューブを設置しました。
麻酔からはスムーズに覚醒し、術後は徐々に元気になっていきました。
数日の入院で無事に退院し、退院後は食欲も出てきてさらに元気になりました。
爬虫類の異物誤食や消化管閉塞はしばしば起こり、時には開腹して物理的に異物を除去したり閉塞を解除する必要が出てきます。
当院は外科的な治療もご提案できるため、異物の誤食で困っている小さなご家族がいる方は、是非当院までご相談ください。