リンパ腫は体のどこにでもできる腫瘍であり、猫において一番発生が多い腫瘍でもあります。
小腸にできるタイプのリンパ腫は、大きく分けて二つのタイプがあり、低分化型と高分化型があります。
低分化型は悪性度が高いことが多く、積極的な治療を必要とします。治療のメインとなるのは化学療法であり、抗がん剤での治療になります。
小腸にしこりを形成することが多く、診断は比較的難易度が低いこともあります。
リンパ腫の発生部位や状況によって外科療法が適応になることもあり、状況による判断が必要になってきます。
高分化型は悪性度が低いこともあり、ステロイドによる治療によって長期間状態が維持できる場合があります。
小腸にしこりを形成しないことが多く、診断が比較的難しくなります。
ステロイド等による化学療法が治療のメインになってきますが、診断が上手くできないことも多く、診断する過程で小腸の生検を実施する際に手術が必要なことがあります。
症例
13歳の雑種猫が数日間の食欲不振を主訴に来院しました。
検査をしてみると、超音波検査にて小腸の近くに液体が溜まっている嚢胞があることがわかりました。
また、小腸の一部が分厚くなっていました。
嚢胞の中身を検査するために一部を抜去していくと同時に小腸に細い針を刺して中の細胞を見てみる細胞診検査を実施しました。
嚢胞の中身は血液が溜まっており、小腸の細胞診では血液の成分しか検出ができませんでした。
その後、より状態が悪くなり、お腹に腹水が溜まってきてしまい、小腸の一部の分厚さも増してきていたので、原因を突き止めるために開腹手術を実施しました。
開腹してみると、嚢胞は小腸に癒着しており、嚢胞内に血液が多量に溜まっていました。
その嚢胞周囲の小腸が20cm程度の長さに渡って分厚くなっており、一部は裂開し、腸液が漏れていたため、腹水が溜まってしまっている状態でした。
裂開した部位を含め、小腸の分厚くなっている部位を切除し、正常な部分同士で小腸の吻合を行いました。
その後腹腔内を洗浄し、閉腹し、手術を終えました。
切除した小腸と嚢胞ともに高分化型のリンパ腫であるとの病理組織診断が出たため、術後からステロイドによる治療を開始しました。
術後はだんだん元気を取り戻していき、退院する頃には食欲もしっかり出てくるようになりました。
術後3ヶ月程度経過しますが、今のところ状態は良好で、再発の徴候などは見られていません。
猫の小腸のリンパ腫は治療が難しいことも多く、長い期間元気な状態を保てる子はそう多くありません。
当院では化学療法や、場合によっては手術による治療も選択肢としてお話しながら、その子に対して何が最善なのか、ご家族とご相談させていただきながら治療を決めていくことが多いです。
リンパ腫にてお困りの小さなご家族がいる方は是非当院まで一度ご相談ください。