軟口蓋とは喉の奥にある膜様の構造であり、鼻と口を分ける役割をしています。
軟口蓋が長いことによって空気の通り道である気道の閉塞がおきてしまい、いびきが出たり睡眠時に起きてしまうといった症状が出ます。
さらに悪化すると、興奮時に呼吸困難がおきて緊急的な状況になることもあります。
短頭種気道症候群がおきてしまう原因の一つとしても知られており、フレンチブルドックやイングリッシュブルドック、パグやボストンテリアなど、鼻が短い犬種に多くおきます。
そのほかにはチワワやトイプードルなどの犬種でも時折見かけることがあります。
症例
6歳齢のトイプードルが急性の呼吸困難を症状に来院されました。
提携している夜間病院からの紹介来院であり、気道に問題があり整復手術が必要な可能性が高いとのことでした。
当院に到着したときには呼吸は比較的落ち着いており、夜間病院での処置によって緊急的な状況は脱している様でした。
レントゲン検査をしてみると、気管が細くなってしまう気管虚脱がありました。
気管虚脱による呼吸困難を疑いましたが、そのほかに呼吸困難になってしまう病気がないかどうか麻酔をかけていったときに気道の内視鏡を実施することにしました。
そのまま入院をしてもらい、呼吸状態を見ながら手術に臨ませてくださいとお話をしてお預かりしましたが、夜間病院での処置の効果が切れてきたのか、入院してからどんどん呼吸状態が悪化していきました。
自力での呼吸が難しくなってきたため、そのまま麻酔をかけて人工呼吸をする処置に移行し、そのまま内視鏡検査を実施することにしました。
内視鏡で喉の奥を見てみると、軟口蓋という膜が重度に伸びていることがわかりました。
そのほかに同じ様な呼吸困難が起きてしまう喉頭麻痺や喉頭虚脱といった病気がないことを確認しました。
また、気管虚脱も内視鏡で気管を見てみると重度ではなかった為、軟口蓋の手術を実施することにしました。
縫合糸を軟口蓋にかけて引っ張り、軟口蓋をなるべく喉の奥から口の中に出してきます。
その後切除ラインを決めて切除しながら断端を縫合し止血していきます。
軟口蓋が短くなり気道が開存していることを確認し手術を終了しました。
手術後麻酔から覚醒させると、呼吸が明らかに楽になっていることが確認できました。
そのまま数日間の入院でどんどん呼吸状態が改善していき、元気に退院していきました。
軟口蓋過長は短頭種の犬種によくある病気で、初期の症状は軽くても、場合によっては重篤になってしまう病気でもあります。
呼吸困難になってしまった小さなご家族がいる方は、是非当院まで一度ご相談ください。